ヨークシャーテリアの作られた目的は、現在のヨークシャーテリアの可愛らしい姿からは想像ができないような気の荒いネズミ取り用のワーキング・テリアとしてからでした。
現在のヨークシャーテリアは、ペットとして改良されてきてはいますが、遺伝子の中にはネズミ取りとしてのワーキング・テリアとしての性格があるということを飼われる前に良く理解しておきましょう。
この記事の目次
1 ワーキングドッグの種類
それぞれの犬種には作られた目的と特徴があります。家庭犬として本来の仕事をする事がなくなった現在の犬にも、その特徴は遺伝子の奥に受け継がれています。
ヨークシャーテリアを飼う前に、犬の種類とどのような目的でどのような地域で作られたかを理解しておくことが大切です。
犬の種類は、作られた目的ごとに直接狩猟犬、間接狩猟犬、牧畜犬、護衛犬、運搬犬、愛玩犬、その他の犬種に分けられます。
- 直接狩猟犬 犬自身が獲物に直接立ち向かい獲物を倒すことを目的に作られた犬です。性格は、勇敢で粘り強く、不屈の精神力を求められて作られました。(柴犬等の日本犬、ボルゾイ等)
- 間接狩猟犬 獲物を追い出したり、追い詰めたり、拾ってきたりすることで猟の補助を目的に作られた犬で人との協調性が求められました。(テリア犬種、ハウンド犬種、レトリバー犬種、セッター犬種、ダックスフンド等)
- 牧畜犬 牧畜の手伝いを目的に作られた犬です。判断力、体力などが求められました。(コリー犬種、ウエルッシュコーギー、シェパード等)
- 護衛犬 牧場等で人がいないときに肉食動物から牧畜を守るために作られました。優しい心と、勇敢な強い意志が求められました。(ピレネー、ドーベルマン等)
- 運搬犬 馬が入れない地帯で荷物の運搬用に作られました。力強い体力と忍耐力が必要とされました。(バーニーズ、シベリアンハスキー等)
- 愛玩犬 昔は皇帝や宮中で愛され権力の象徴になったこともありました。見た目と性格の愛くるしさが求められました。(シーズー、マルチーズ、チワワ、ポメラ二アン、パグ、パピヨン等)
- その他 馬車の護衛犬(ダルメシアン等)
- 魚取りの補助(ニューファンランド等)
- 闘犬(ブルドッグ、土佐等)
ヨークシャーテリアという犬種は面白いことに、ワーキングドッグの種類の中で狩猟補助を目的として人との協調性を求められて作られた間接狩猟犬の仲間に入っていますが、ネズミ捕りを目的に作られているので、獲物を直接倒す勇敢で粘り強く、不屈の精神力を持った直接狩猟犬の特徴も持ち合わせています。また、後の改良の過程においては、その美しい被毛の美しさから見た目と愛くるしさを求められた愛玩犬としての特徴も併せ持ってます。
ヨークシャーテリアは、愛玩犬としての可愛らしい体の中に狩猟犬としてのテリア気質をしっかり併せ持っており、人で例えれば綺麗だけど気の強いお姫様のようにとても魅力的な面白い犬種なのです。
2 テリア気質
ヨークシャーテリアは、可愛らしい容姿とは裏腹にしっかりとテリア気質を持った犬種だと理解して頂けたと思います。
では、テリア気質とはどんなものでしょう。
- 頭の回転が速い
- 粘り強い
- 諦めが悪い
- 頑固
- 興奮しやすい
- 勇敢
- 人への依存度が低い
- 単独で狩りをしていたので独立心が強い
テリア気質とはこのような特徴があります。
3 ヨークシャーテリアの性格
可愛い姿の中に勇敢で気の強い、興奮しやすいテリア気質を持ったヨークシャーテリアではありますが、被毛の美しさからマフ(手袋代わりに手を温める犬)として、また、皇帝や貴族の抱き犬として、愛玩犬としての改良がされた歴史から「ヨークシャーテリアは目で会話する」と言われるくらい甘えん坊な愛玩犬としての性格も持ち合わせています。また、神経質でナイーブな面も持ち合わせていて、一度気に入らないことがあるといつまでも覚えていて、かたくなにそれをしない面も持ち合わせています。
参考までに
JKCスタンダードにおけるヨークシャーテリアの性格は、用心深く、利口なトイ・テリアである。気質は安定しており、勇敢である。と記載されています。
4 血統ごとの特徴
同じヨークシャーテリアでも実は血統ごとの特徴があります。面白いことに、イギリス原産のヨークシャーテリアはイギリス人の性格に似てどちらかというと神経質で人見知りがあり、頑固なしっかりとしたテリア気質をもった犬が多く、コートも綺麗なシルキーの子が多いように感じます。
一方、アメリカのヨークシャーテリアはアメリカ人のように陽気で明るくてフレンドリーな犬が多く、コートもイギリスに比べると色々な毛質の子がいるように感じます。
☆ワンポイントアドバイス
- 犬は人間の目的に併せて改良されてきたことは理解して頂けたと思いますが、ヨークシャーテリアの性格も実は今現在もヨークシャーテリアのブリーダーの求めるものごとに犬舎ごとに性格も含め改良がされているのです。
- 大人しい飼いやすいヨークシャーテリアにしたいというブリーダーのところの犬は同じヨークシャーテリアでもテリア気質はあったとしても他の犬舎の子に比べたら産まれた時から明らかに飼いやすい子犬である確率が高くなります。
- もし、ブリーダーから子犬を迎え入れようと検討されている方は、「この犬舎のヨークシャーテリアの性格の特徴はなんですか?」という質問をしてみると子犬選びの参考になると思います。
5 動く宝石と言われるヨークシャーテリアの被毛
今、世界中には非公認犬種を含めて700~800種類の犬種があるといわれています。
そのような、沢山の犬種の中においてもヨークシャーテリアのような綺麗な被毛をまとった犬種はいません。ヨークシャーテリアの毛は7回色が変わるといわれるくらい、生涯を通じて毛色が変化する犬種です。同じ親犬から産まれても毛質も毛色の変化も違います。
繁殖していくにあたり難しくもあり、また一番魅力的でもある点です。
色々な被毛、毛色のヨークシャーテリアがいる中で動く宝石と言われる正しいヨーキーの被毛と毛色についてスタンダード解説を参考に見ていきましょう。
5-1 シルキーコート
- ボディの部分は完全に真っすぐで(ウェービーではない)光沢がある。
- 立派な絹糸状の毛質であり、ウーリー(羊毛状)ではない。絹のように光沢がある。
- 毛が細く、しなやかで、薄い高級な絹織物のように滑らかで腰があり、羽二重のようなつやと手触りでなければならない。
- 頭部の毛は長く、鮮やかなゴールデン・タンであり、頭部の両側で色がより濃くなる。
☆ワンポイントアドバイス
- 正しいシルキーコートとは、被毛を手で触った時に、ひんやり冷たい感じがする被毛です。人の衣で例えると、絹布の一重の衣をまとっている感じです。
- ヨークシャーテリアの光沢は、皮脂の分泌によるものでやや油性で臭いが強い犬種と言われています。
5-2 シングルコート
- 被毛の状態は外毛(オーバーコート)だけの単層毛
- 犬科の標準的な外毛と下毛のある二重層毛ダブル・コートではない。
☆ワンポイントアドバイス
- シングルコートのヨークシャーテリアは換毛期がないので抜け毛がほとんどありません。
- その代わりに、カットをしなければ人間の髪のように伸び続けますので定期的なトリミングが必要になります。
- 伸ばすときは、絡みやすいので1日に1回はコームを入れるようにすると綺麗に伸びます。
- アンダーコートがないので冬の寒さには弱いです。冬のお散歩の際には、嫌がらないのであれば服を着せてあげることもお勧めです。
5-3 ヨークシャーテリアの毛色
スティール・ブルー(銅鉄色)・・・ボデイの毛色
- ブルー色が基調であって、ブルーの毛が濃く絹糸のように光輝いて見える毛色だと考えられます。
- ダークという色の濃さの範囲は幅広く、シルバー・ブルーに見えてはならないが、ブルー色が全く感じられないほど濃く、黒色に見えてもならないということです。
- タン(黄褐色)
- 鮮やかなゴールデン・タンで頭部の両側で色がより濃くなる。
- タンの毛は全て根元のところが中程よりも色が暗色で、先端ではさらに明るいタンの色合いになっていなければならない。
参考までに
- ソフトコート・・・フワフワしたコート
- ウーリー・・・羊の毛のようにフワフワしており光沢がなくシルキーコートのように成犬になっても色が変わらず黒いままでタンの色も綺麗なタンに変わりません。